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肌の基礎知識

お風呂の時間をより至福の時間に!② ~香りで変わるバスタイム~

2025.09.17

  • #バスタイム
  • #入浴剤
  • #香りの効果

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前回は「お湯の色」がもたらす心理的な効果についてご紹介しました。
入浴剤といえば、色だけでなく「香り」も楽しみのひとつですよね。

実は香りにも、それぞれ心や気分に影響を与えるはたらきがあります。リラックスしたいときや気分を切り替えたいときに、香りは大切なサポート役になってくれるのです。

今回は入浴剤を中心に、ルームフレグランスや香水など日常生活にも役立つ「香りの心理的効果」についてご紹介します。色と同じように、香りも上手に取り入れることで毎日のリフレッシュがもっと豊かになりますよ。

香りのイロイロ

皆さんは「香り」と聞いて、どんなものを思い浮かべますか?

お気に入りの香水の香り、美味しいごはんのにおい、あるいはおばあちゃんの家の畳の香りや、学生時代に使っていた制汗剤の香りかもしれません。
香りの強いものが苦手という方でも、「ある香りを嗅いだ瞬間に、当時の情景や気持ちが一気によみがえる」という体験をしたことはありませんか?
これは「プルースト効果」と呼ばれ、フランスの作家マルセル・プルーストが描いた、マドレーヌの香りによって幼少期の記憶が一気に甦る描写に由来しています。

つまり、特定の香りが記憶や感情を鮮やかに呼び起こす現象のことをいいます。

人間の五感(視覚・嗅覚・味覚・聴覚・触覚)の中で、嗅覚だけは本能や記憶と直結しています。香りの情報は脳の「嗅球」から「扁桃体」「海馬」へとダイレクトに伝わり、記憶や感情をつかさどる部位に直接作用します。そのため香りの記憶は特に強く残りやすく、気分や気持ちに影響を与えやすいのです。

つまり、香りは単なる「におい」ではなく、私たちの心と深くつながる要素だといえます。
「この気分を忘れたくない」と思うときには、お気に入りの香水やルームフレグランスを使いながら過ごすことで、香りとともにその記憶を残すことができるかもしれませんね。

香りの種類と効果

香りは過去の記憶や感情と強く結びつき、気分に影響を与えることがあります。これは前章でご紹介した「プルースト効果」にも通じるもので、香りは単なるにおいではなく、私たちの心に働きかける大切な要素なのです。

そんな香りには、大きく7つの系統があり、それぞれに特徴と効果があります。

フローラル系は、バラやジャスミン、ラベンダーなどに代表される華やかで甘い香りです。幸福感や安心感を与えてくれることから、香水や入浴剤でも特に人気があります。

柑橘系はオレンジやレモン、グレープフルーツ、ベルガモットといった爽やかでナチュラルな香りです。多くの人に受け入れられやすく、気分をリフレッシュしたい朝や仕事前のシャワータイムにぴったりです。

スパイス系はシナモンやクローブ、ブラックペッパーなど、香辛料を思わせる刺激的な香りです。個性的で印象に残りやすく、活力を高めたり新しい挑戦を後押ししたりする場面に適しています。

オリエンタル系はイランイランやサンダルウッド、パチュリなどの深みのある香りで、エキゾチックかつ官能的な印象を与えます。夜のリラックスタイムや特別なシーンに合う重厚な甘さが特徴です。

樹木系はヒノキやシダーウッド、ティートゥリーなど、まるで森林浴をしているかのような落ち着いた香りです。自然の中で深呼吸するような安心感を与え、日本人にとっては馴染みの深い香りです。

ハーブ系はローズマリーやミント、バジルなど、清涼感があり頭をすっきりさせてくれる香りです。集中力を高めたいときや気分を切り替えたいときに向いています。

樹脂系はフランキンセンスやミルラなど、古代から儀式や瞑想に使われてきた歴史のある香りです。重厚で甘く、心を深いところで落ち着かせる作用があるとされています。

こうした香りは、その日の気分や目的に応じて活用することで、入浴時間をより豊かなものにしてくれます。リラックスや安眠にはラベンダーやサンダルウッド、気分を明るくしたいときにはグレープフルーツやジャスミン、集中したいときにはローズマリーやレモンなどが効果的です。

香りは記憶や感情を呼び覚ますだけでなく、気持ちを整える力を持っています。だからこそ、入浴剤を選ぶときには“好きな香り”にこだわってみることが、心地よいお風呂時間への近道なのです。

今日は、どんな香りでバスタイムを彩ってみたいですか?

香り選びのヒント

香りにはさまざまな種類や効果がありますが、いざ選ぶとなると「どの香りが自分に合うんだろう?」と迷うこともありますよね。そこで、香りを選ぶときに役立ついくつかの“ポイント”をご紹介します。

その日の気分で選ぶ
疲れている日にはラベンダーやカモミールなどリラックスできる香りを。気分を高めたい日にはローズや柑橘系の明るい香りを選ぶのがおすすめです。

・なりたい気分で選ぶ
眠りをサポートしたいときはラベンダー、気分を切り替えたいときは柑橘系や森林系など。「今日はこう過ごしたい」という目的に合わせて選んでみましょう。

・季節に合わせて選ぶ
寒い冬にはバニラやサンダルウッドのような温かみのある香りを。暑い夏にはレモンやミントなど爽やかな香りを選ぶと、四季の変化を感じながらバスタイムを楽しめます。

・好きな香りを選ぶ
やはり一番大切なのは、自分が「いい香りだな」と感じるものを選ぶことです。好きな香りは安心感を与え、バスタイムをより特別でリラックスできる時間にしてくれます。

香りの選び方に正解はありません。大切なのは、自分が「心地よい」と感じる香りを選ぶことです。その日の気分やライフスタイルに合わせて香りを取り入れれば、お風呂の時間はもっと豊かで、楽しみなひとときになります。

そして、香りの世界をさらに広げてくれるのが「色」との組み合わせです。
実は、色と香りには共通するイメージや心理的な効果があり、それらをうまく組み合わせることでリラックスやリフレッシュの効果をより深めることができます。次のチャプターでは、この「香りと色の調和」についてご紹介します。

香りと色の調和

「好きな香りと好きな色が合わさったら最高!」と思ったことはありませんか?
たとえば、柚子の香りのお風呂なのに、お湯の色が青だったら……少し違和感を覚えるのではないでしょうか。

なぜそのように感じるのかというと、私たちの脳は香りと色を無意識のうちに結びつけて認識しているからです。柚子の香りであれば多くの人が「黄色やオレンジ」を思い浮かべるため、それと大きく異なる色を目にすると違和感が生まれるのです。

2017年に行われた実験では、柚子の香りをつけたお湯を「黄色」「青色」「無色」で用意し、入浴による効果(暖かさの感じ方やリラックス度など)を比較しました。その結果、同じ香りであっても、柚子のイメージと調和する黄色のお湯に浸かったときの方が、リラックス感や満足度が高かったと報告されています。
(参考文献:長谷博子, 平林由果. 香りと色の調和度が入浴効果に与える影響. 人間工学. 2017,  Vol.53, Supplement, p.290-291 .)

これは、かき氷シロップの体験と似ています。味自体は同じでも、「赤いシロップ=いちご味」「緑のシロップ=メロン味」といったように、見た目の色と香りの印象が味覚にも影響を与えます。つまり私たちは五感をバラバラに使っているのではなく、視覚・嗅覚・味覚といった複数の感覚を組み合わせて体験しているのです。

このことからも分かるように、香りと色の組み合わせは入浴の心地よさを左右する重要な要素です。たとえば、ラベンダーの香りなら紫色や淡いブルー、柑橘系の香りなら黄色やオレンジといったように、香りと色を調和させることで、より深いリラックスやリフレッシュを得やすくなります。

お風呂は1日の疲れを癒す大切な時間です。そこに「香り」と「色」を上手に取り入れることで、ただのお湯につかるだけでは得られない、五感で楽しむ特別なリラックスタイムへと変わっていきます。

まとめ

入浴剤には、色も香りもないシンプルなものから、カラフルなお湯色や精油をブレンドしたものまで、さまざまな種類があります。その日の気分や目的に合わせて香りを選ぶことで、バスタイムはぐっと心地よいひとときになります。

香りは、私たちの心と体に大きな影響を与えてくれる存在です。本コラムでご紹介したように、香りそのものの効果や色との調和を意識することで、お風呂の時間はより一層リラックスできる時間へと変わります。

「今日はゆっくりお風呂に浸かってみようかな」と思っていただけたら嬉しいです。ぜひお気に入りの香りを見つけて、毎日のバスタイムを自分だけの至福の時間にしてください。